ボウリング・フォー・コロンバイン

〜年寄りを苛めるのは楽しいですね〜

2003 米 

監督:マイケル・ムーア



まあ想像してみてください。あなたはかつては一世を風靡した一流俳優。若い頃は肉体派で鳴らしたもんですが、近年は寄る年波に勝てず、体力も気力もすっかり弱り、大邸宅でヒマをもてあます日々。でまあ、たまたま趣味が銃いじりだったもんでその友愛会みたいな団体に顔を貸したら、連中は大喜びであなたを広告塔に祭り上げます。それ以来、足腰も痛いし夜中に3回も小便に起きる身でありながら、銃所持の権利をシャウトして全米を回るハメに。若い頃から映画ばっかで新聞なんか読む習慣が無かったあなたは、講演に行った街でつい先日、トチ狂った高校生二人が高校で銃を乱射して学校を血祭りにしたことなんて知ったこっちゃありません。たいした悪意も主張もなく、台本通りにことを進めたとしても誰があなたを責められましょうか。
しかしある日、そんなあなたに対して頭に来ているらしい身なりのだらしないデブが突然あなたのお宅にチャレンジ・ジョイ。同じ協会の同士だってんで家に上げたらこいつが食わせ者で、なんでアメリカではほかの国より銃による殺人が遥かに多いのか、アンタはコロンバインで銃所持の権利を叫んで何とも思わないのか、これが銃によって殺された6歳の少女の写真だこの写真を見て何も思わないのかと、あなたが普段考えているはずもないような難問をぶつけて迫って来るわけです。当然あなたは返答できず、気分を大いに害されながらもカメラも回っていることですし塩を蒔くわけにもいかず、ほうほうの体で逃げ出す姿をバッチリカメラに収められ、デブの方といえばすっかり勝ち誇った顔で軒先に“銃で殺された6歳の少女”の写真を置いていく、というタチの割るいイヤガラセをするのですね。酷い話ですね。


 
 

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