バーバー吉野

〜どうすればこの映画は良くなるか、一緒に考えましょう〜

2003  日 

監督/荻上直子


 栄えある第13回PFFスカラシップ作品であります。
 監督の荻上さん、これからもがむばってください。と、いう訳で、いずれ日本映画界に新風を吹き込むやも知れぬ新鋭の童貞作、もとい処女作に関して、わたくしは否定的な感想を持ち得ません。ていうか、ボロクソ書くばかりが映画感想ではありません。さらに言うなら、わたくしのようなド素人がいかにネットの片隅で威勢良く吠えようと、そんなものは蚊のくしゃみのようなものです。ですので以下の文章は軽い気持ちで、読み流していただいて結構です。

で、物語。舞台は恐らく関東近郊とおぼしきド田舎。ここでは何故か、男の子との子供達は皆、ラモーンズのようなヘアスタイルにすることがしきたりで決まっており、主人公の母親である床屋のおばはん(もたいまさこ)は、その伝統を守るため、街のガキ共のヘアスタイルがそのしきたりから逸脱することを許しません。そこに越してきた都会からの転校生。彼は都会出身ということもあり、この田舎の風習に基づき、ヘアスタイルを皆と同じにすることを潔しとせず、伝統に反発します。やがて主人公をはじめとする村の子どもたちも、この意味不明のしきたりに対しレジストをはじめ…という、だいたいこんなかんじです。

 さてこの映画の問題点ですが、「しきたり×子どもの自立心」という構図で物語を語りたいなら、やはりしきたりに固執する床屋のババアをもっと恐ろしく、狂気じみた人物として、せめて「ミザリー」のキャシー・ベイツか、「黒い家」の大竹しのぶくらいに濃く描くべきところを、ある意味街のおっかさんとして親しみの持てるキャラとして描いているところがいただけません。じゃあ、村の和を乱そうとする転校生のクソガキを何を考えているのかわからないインベーダーとして描いているのか、といえば決してそうでもない。いったいどっちの味方なんだと思わず声を荒げたくなることしきりです。

 あと、子供達は演技が全て「劇団東俳」風で、街のはずれの納屋を「秘密基地」にしているような賭けてもいいけど監督、あんたの子ども時代はこんなんじゃなかっただろ、というような定食描写は勘弁してください。そしてこうした映画にお決まりの「街の外れ者」の吉骸おやじのキャラや、主人公のお父さんの身のない説教ももうちょっとヒネってください。それにオープニングで子供達が歌う「ハレルヤ」や、突然登場する天狗など、物語中の伏線は頭の悪いわたくしのような観客のためにちゃんと回収していただけませんんか
 荻上監督のご活躍とご健勝をお祈りしております。

 
 

 

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