新・バブルと寝た女たち

〜カムバック……久々に感動した〜

98・日

監督:服部光則

 



■第一部 バブル

 わたしはその頃野原でトンボを追っかけたり変態のおっさんにおっかけられたりしていましたのでよく知りませんが、時は80年代後半、日本はバブルに浮かれ狂い、町中で札束がバラ巻かれては道端のいたるところにベンツが乗り捨ててある、そんな状態だったといいます。そんなバブル絶頂期に証券会社に勤める一般職の小松みゆきさんはたいへん慎ましく地味に暮らしていたのですが、ご利用が計画的でなかったカード狂いの同僚OLさんが借金のグチを溢したその直後に「ねえ、引越しすんだけど保証人になってよ。だから実印貸してよ」と持ちかけられて素直に応じちゃったのが身から出た錆。アットとそのとき気がつけば他人の借金の肩代わりをさせられてはっじめって〜の♪借金取立てなんかに遭っちゃったりして大変です。で、小松さんが金に窮しているのを知った証券マンの皮を被った女衒であるところのゲス野郎に引き合わされたのが、峰岸徹演じるところの土地コロガシの成金親父。この親父がチョイ悪どころかまったくの極道でして(演じている人のせいもあるでしょうが)小松さんをさっそくコマしたその足で、目黒あたりの高級マンションを宛がって愛人化します。お洋服を買ったり高級な食事を奢ったりで、爽やかさの欠片もないような『プリティ・ウーマン』的情景が続きますがここで登場するの小松さんの高校時代の後輩だったという自主映画青年の穀潰し。小松さん、すっかりこの羽虫野郎にコロっといっちゃいまして「映画製作代よ〜ん」てな感じで手の切れるようなピン札の束をプレゼント。小川さんがこのジシュエーガ乞食にタラシ込まれているのを知った峰岸の怒髪は天を貫きついでにコチンも硬くなり、小松さんを全裸にひん剥いてはその全身にピン札を女体盛り、札束ベッドで彼女をヒイヒイ言わせるのでした。

■第二部 バブル崩壊

 はてさてやってきました89年ブラック・マンデー。当時、株屋さんや実業家さんが次々線路に飛び込むのでJR電車は仕方なしに先頭車両にアニマルバンパーをつけたくらいですからまったくざまあ無いです。トーゼン峰岸の土地コロガシ成金野郎の所有土地価格は二束三文に下落、てなわけで小松さんへのおこづかいもピン札の束からクシャ札とジャリ銭にレベルダウンです。何といいましてもこの映画におきましては峰岸さんの落ちぶれっぷりは、はっきり言って『ベニスに死す』で気持ちわるーい化粧をしたまま頓死するダーク・ボガードの演技を軽く越えています。マジで髪が真っ白になり、セルジュ・ゲンズブール系を目指せばそれなりにイイ線いきそうなヨレヨレ衣装に身を包み、自販機の小銭を漁る彼の姿は単に暢気な映画だった『誰も知らない』なんか記憶の彼方に追いやるくらいの大爆笑。小松さんは峰岸に見切りをつけて自主映画乞食のもとへ……しかし好事魔多し小嶋社長は後がなし。小松さんのおこづかいですっかり堕落した(ってか端からどうしようもないクズ野郎なわけですが)この8ミリオナニーゴキブリは、小松さんの留守中にテメーの映画のミューズであるところのブスを布団に引っ張り込んであはんうふん。帰宅して愕然とする小松さんに借金の催促状を叩きつけ、「借金と一緒に出て行きやがれこの売女」と一喝。ひとりぼっちになった小松さんは寂しく夜の公園でブランコを漕ぐのでした。ゆよーん、ゆよーん、ゆやよん。

■第三部 激安の90年代

 しかし!!!ここで終わらないのがこの映画の素晴らしいところ。そうです、小松さんはこのドン底からまるで『ロッキー』のスタローンも、『フレンチ・コネクション2』のジーン・ハックマンもキンタマが縮み上がるくらいのド根性でカムバックするのです。勤めた先は個室マッサージ。「25歳ってちょっとツラいけど……まあ童顔だし20ってことで」と彼女を採用した店長。これもこの映画の素晴らしいポイントのひとつなのですが、この店長がイキナリ彼女を味見しちゃったりするツーマラネエありきたり展開がないとこ。「アタシはこれでは終わんないわよ」とタンカを切る同僚のマッサージ嬢姉ちゃんとともに頑張る!頑張る!頑張る!
 ……ここにきてはじめて輝くような笑顔を見せる小松さんがとっても素敵です。
  はてさて頑張りまくった彼女は同僚の姉ちゃんと一緒に女子高生援交の斡旋という地に足がついたカタい仕事を立ち上げ、そこそこの成功を収めるのでした。めでたし。めでたし。

最近観た映画の中で一番感動しました。超おすすめ。


 
 

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