2003 米
監督:カーティス・ハンソン
工員エミネムはデトロイトという街に住んでいます。とにかくこのデトロイトという街は、住んでいる人間の9割9分が黒人。そんな中でエミネムは、猿の惑星に来たチャールトン・ヘストンのような理不尽なまでの孤独を噛みしめる毎日です。また、この街にはちょっとした個人間のモメ事が起きると、暴力ではなくリズムに合わせた口喧嘩でケリをつけるという奇妙な風習がありました。日本でも福岡あたりでは交通事故レベルのトラブルは、被害に遭った先方に焼酎を献上する(被害の度合いによって本数が変わってくる)ことで解決するらしいので、それぞれの土地にはその土地特有の風習というものがあるものです。しかしまあ、口喧嘩というものはなかなかアカデミックで頭を使うバトルです。エミネムの周りの黒人たちも、
「お前のオカン、ゆうべ兎我野町あたりに立っとったけど、朝まで客がつかんかったらしいな」
「妹のアナルを1500円で近所のオッサンに売らしとるオマエん家のオカンよりはマシじゃ。800円くらいやったらわしも買うちゃるけんの」
といった高尚かつハイレベルなライム・バトルを展開し、そんな中たったひとりの白んぼであるエミネムはもう遺伝子レベルのハンデを背負っていますので大変です。四六時中ネタ帳を持ち歩き、いかに相手のオカンと家族と肉体的コンプレックスを貶めるかに頭を悩ますエミネム。そんなエミネムのオカンがこれまた最低でして、何とエミネムの高校時代の先輩だった無職のクズ野郎(これが映画史上まれに見るクズ野郎)と自宅でファックしまくってますので、とりあえずエミネムのバトル相手は、オカンのネタには事欠かないのですね。
なんやかんやで最終的にはエミネムはバトル大会で優勝し、ビッグになってデトロイトを去るのですが、そのせいかデトロイトではすっかり口喧嘩でトラブルを解決する文化的風習が廃れてしまい、殺人と暴力と銃撃戦が支配するカオスに落ちぶれてしまいました。後にこの街を買収したオムニ社という巨大メーカーが治安維持のためにロボコップを導入するのは数年後のことですが、これはまた別のお話。
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